2年にわたる航空大学校生活のしめくくりとなるのは仙台フライト課程です。訓練は双発機であるビーチクラフト式G58バロンを使用して、7カ月間のトレーニングが行われます。
上空では容赦なく片側エンジンを停止するなど、クリティカルな状況を想定したトレーニングが繰り返されます。いかなるときにも沈着で冷静に、そして迅速で的確な判断と操作が要求されます。この課程では、これまで航空大学校で学んだすべてが問われるといえます。
また仙台フライト課程の後半では、計器飛行をマスターすることも重要なテーマとなります。それまでのフライトは、基本的には有視界飛行、すなわちパイロットの目視により外部を監視しながら行われてきました。
しかし、実際の旅客機の運航は、晴天の下でだけ行われるわけではありません。パイロットはたとえ視界がゼロの雲中飛行を強いられたとしても、速度、高度、姿勢、方位、そして現在位置などをすべて計器から判断する能力を求められます。しかも管制機関から承認され、また指示された通りのコースを正確に飛行するテクニックが安全運航上不可欠となります。そこで重要になるのは、飛行機をただコントロールするのではなく、さまざまな情報から常に先の状況を予測し、いかに飛行機を正確にオペレーションできるかという能力です。
コンピュータ・テクノロジーの導入によって、現代の旅客機の運航は大幅に自動化されています。そうしたシステムを最大限に活かし、いかにしてより安全で快適、そして経済的なオペレーションをマネジメントできるかという能力がこれからのパイロットには必須となります。学生はその能力の基礎をフライトトレーニングにおいて学びます。
そして、それが「できる」と実感されるようになる頃には、いよいよ航空大学校の卒業も近いということになります。トレーニングの合間には、定期エアラインの担当者との就職面接などが行われるようになります。いよいよエアライン・パイロットとしての新しい人生にチャレンジしていくことになります。